相反するものを見つめる高潔かつ聡明な知者
対応する天体:月
絵柄の解釈
ここではライダー版(ウェイト版、ウェイト・スミス版)の絵柄を元に描かれている人物やモチーフを解説します。
背景・ロケーション
女教皇(女司祭)は『B』と書かれた黒い柱と『J』と書かれた白い柱の間に腰掛けています。
『B』はボアズ(Boaz)、『J』はヤキン(Jachin)をそれぞれあらわしていると言われています。
ボアズとヤキンはソロモン王の神殿に立てられていた柱とされており、旧約聖書にもこの二つの柱にまつわるエピソードが記されています。
ボアズは女性性や厳格さ、ヤキンは男性性や慈悲深さをそれぞれ意味します。
また、女教皇の背後に渡された幕には、ザクロとナツメヤシが描かれています。
ザクロは女性性、ナツメヤシは男性性の象徴です。
このことから女教皇は相反する二つの性質を内包する存在であることがうかがえます。
さらに、足元に描かれた月から、女教皇が月の女神を信仰している、あるいは月の女神そのものであると解釈できます。
衣装や小物
女教皇は頭上に白い冠を頂いています。
これはエジプト神話に登場する女神イシスの冠とも言われています。
エジプト神話におけるイシスは冥界の神オシリスの妹であり妻でもあります。
オシリスの死後、処女のまま天空神ホルスを身籠ったことから、聖母マリアのもとになった神とも言われています。
ギリシャ神話のアルテミスしかり、処女神とは神秘的で高潔ではあるものの、冷たく残忍な性質を持ち、うかつに近寄ると危険な目に遭いかねないと考えられてきました。
さらに、彼女のまとう長いローブは純粋や純潔をあらわしています。
このことからカードに描かれている人物は高潔かつ純粋でありながら、それゆえに近寄りがたい存在であることがわかります。
人物と共に描かれているもの
カードに描かれた女教皇は手に『TORA』と書かれた巻物を持っています。
この文字が何を意味するのかは諸説ありますが、ユダヤ教における律法書を意味する「Torah」であるという説もあれば、大アルカナ10番「運命の輪」に書かれているROTAのアナグラムであるという説もあります。
また、巻物の一部がローブに隠れてしまっていることから、全貌ははっきりとしません。
いずれにせよ正体が隠されていることから、神秘的で謎めいた存在を象徴すると考えられます。
カードの意味
ここでは占いの解釈に正逆位置を取り入れない場合も考慮し、あえてカードの意味をポジティブ、ネガティブと表記しています。
正逆位置を取り入れる場合はポジティブな意味を正位置、ネガティブな意味を逆位置と考えてください。
Positive(正)
・清らかな精神、真面目な性格
・公平や公正を重視する。偏ったものの見方をしない
・曖昧さや狡猾さを排除し、理性的かつ知的にものごとを捉える
・高潔でありながら内面は繊細で傷付きやすい
Negative(逆)
・神経質、潔癖症
・わずかな欠陥や間違いも許せず、徹底的に排除しようとする
・完璧主義ゆえに認知や価値観が歪み、相手の欠点を徹底して糾弾してしまう
・曖昧さを嫌い何事においても白黒つけようとする
解釈の一例
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解釈に迷ったときは
ここに記したカードの解釈はあくまでも一例です。
同じカードでも、相談者の状況や占者により解釈は異なります。
自分の解釈に自信がないときや、他の人の解釈も聞いてみたいというときはプロに相談するのもひとつの方法です。
占い師紹介
島谷実郷(しまや みさと)
占星術師・タロット占い師。 探偵事務所調査員や納棺師、ライターなどの職業を経て2017年『占い処 十一時屋』を設立。 2020年5月島根県へ移住。 現在は松江市や出雲市を中心に対面鑑定を行うかたわら、チャットやSNSを利用したオンライン鑑定も受付中。