無から有を生み出すクリエイター
対応する天体:水星
絵柄の解釈
ここではライダー版(ウェイト版、ウェイト・スミス版)の絵柄を元に描かれている人物やモチーフを解説します。
背景・ロケーション
魔術師の周囲には赤いバラと白い百合が咲き誇っています。
赤いバラは情熱、白い百合は純潔の象徴です。
また、一説にはこの花は旧約聖書の雅歌2章1節に書かれているシャロンのバラと谷の百合ではないかとも言われています。
ただし、聖書の中に書かれているシャロンのバラとはタロットの中に描かれているようなバラではなく別の花であるという説もあるようです。
最も有名なのはシャロンのバラ=ムクゲ説ですが、ムクゲは東アジア原産の植物で、聖書の舞台となる土地で自生する可能性は低いでしょう。
また、シャロンとはイスラエルの地名ですが、ではこの魔術師がいる場所がシャロンなのか?というと、その可能性は低いようです。
いずれにせよ、ここに描かれている花がシャロンのバラと谷の百合であるとすれば、どこか別の土地から運んできたと考えるのが自然でしょう。
本来なら気候も地質も違う場所に生きる植物を根付かせ、さらに繁殖させるのは決して簡単なことではありません。花々を美しく咲かせるまで、あらゆる試行錯誤や創意工夫を経たはずです。
このことから、赤いバラと白い百合は目的の達成や願望の成就を意味していると解釈できます。
衣装や小物
魔術師の頭上には「無限」を意味する円環(レムニスケート)が描かれ、腰には尾をくわえた蛇が巻き付いています。
これは始まりも終わりもなく繰り返す、すなわち永遠の象徴と考えられます。
さらに、魔術師は右手に白いワンドを持ち、左手は地面を指差しています。
このポーズは錬金術の父とも呼ばれるヘルメス・トリスメギストスが残したとされる「唯一なるものの奇跡を成し遂げるにあたっては、下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとし」という言葉をあらわしています。
つまり、ここに描かれているのは、今まさに魔術師の体の中をエネルギがー駆け巡り、奇跡を起こさんとする場面なのです。
このことから魔術師のカードは奇跡の始まり、スタートを象徴するカードと解釈できます。
人物と共に描かれているもの
魔術師の前に置かれたテーブルには、聖杯と棍棒、剣、星のマークが描かれた円盤が置かれています。
これはそれぞれカップ(聖杯)、ワンド(棍棒)、ソード(剣)、ペンタクル(円盤)をあらわすモチーフです。
これらの4つのモチーフは、小アルカナのカードでも繰り返し描かれます。
また、カップは水、ワンドは火、ソードは風、ペンタクルは土と、それぞれが四大元素を象徴しています。
つまり、これら四大元素を入念に準備した魔術師は、この世のあらゆるものを創造できる状態にあるのです。
彼の自信に満ちた表情からも、それをうかがい知ることができます。
カードの意味
ここでは占いの解釈に正逆位置を取り入れない場合も考慮し、あえてカードの意味をポジティブ、ネガティブと表記しています。
正逆位置を取り入れる場合はポジティブな意味を正位置、ネガティブな意味を逆位置と考えてください。
Positive(正)
・明確な目的意識を持ち、主体的に行動する
・揺るぎない自信が抗いがたい魅力や説得力を生み出す
・入念に準備をしたうえで理想や目標へ向かう
・知識やスキルを十分に活かせる、実力を発揮できる
Negative(逆)
・目的が不確かで曖昧な状態
・心に迷いがあり、自信が持てない
・突飛な行動で周囲を驚かせたり、注目を集めたがったりする
・人を陥れたり騙したりなど、才能を間違った方向に活かす
解釈の一例
恋愛
+ 理想的なパートナーとの出会い、知的なコミュニケーション、積極的なアプローチが恋愛成就につながる
− 都合のいい相手、結婚詐欺、口ばかりで行動のともなわないパートナー、手放すべき恋
仕事
+ 才能を活かせる仕事や職場、意欲的に仕事に取り組む、企画やアイデアが実現する
− やる気やモチベーションが上がらない、実力不足、他の仕事や職業に目移りする
状況・性質
+ 積極的、博識、魅力的な人物、頭の回転が早く立ち回りがうまい、思い通りに物事が運ぶ、実力で勝利を手にする
− 消極的、不器用、優柔不断、意志薄弱、疎外感、苦手意識、八方塞がり、その場しのぎ
解釈に迷ったときは
ここに記したカードの解釈はあくまでも一例です。
同じカードでも、相談者の状況や占者により解釈は異なります。
自分の解釈に自信がないときや、他の人の解釈も聞いてみたいというときはプロに相談するのもひとつの方法です。
占い師紹介
島谷実郷(しまや みさと)
占星術師・タロット占い師。 探偵事務所調査員や納棺師、ライターなどの職業を経て2017年『占い処 十一時屋』を設立。 2020年5月島根県へ移住。 現在は松江市や出雲市を中心に対面鑑定を行うかたわら、チャットやSNSを利用したオンライン鑑定も受付中。