命あるものをやさしく見守る慈母
対応する天体:金星
絵柄の解釈
ここではライダー版(ウェイト版、ウェイト・スミス版)の絵柄を元に描かれている人物やモチーフを解説します。
背景・ロケーション
女帝の足元には小麦やトウモロコシを思わせる穀物畑が豊かに生い茂り、背後には流れる川と森が広がっています。
これらの豊かな自然や実り多い作物は、女帝の統治によりもたらされたものと考えられます。
ただし、植物にしろ動物にしろ、まずは種を蒔いたうえで大事に守り育てなければ繁栄はあり得ません。
このことから、女帝は妊娠や繁殖などを暗示していると解釈できます。
衣装や小物
女帝は頭上に12個の星が輝く冠を頂いています。
この星は黄道十二星座をあらわしていると思われますが、一説には新約聖書『ヨハネの黙示録 十二章』に記されている「ひとりの女が太陽を着て、足の下に月を踏み、その頭に十二の星の冠をかぶっていた。」という一節によるものではないかとも言われています。
また、彼女はザクロの模様が描かれたドレスを身にまとい、手には王笏を持っています。
大アルカナ2番「女教皇(女司祭)」にも描かれているように、ザクロは女性性の暗示であり、豊穣の象徴でもあります。
王笏は王冠、王球に並ぶレゲーリア(王位の象徴)のひとつであり、彼女が王位を継承する立場であることをあらわしています。
しかしながら、彼女は決して権力や武力により人の心を支配し、従わせようとはしません。
人も自然も分け隔てなく慈しみ、深い愛情で包みこむことで、固い絆や連帯感を生み出します。
このことから、女帝は人間というより豊穣や繁栄を司る地母神のような存在として描かれているとも解釈できます。
大アルカナ1番「魔術師」と酷似したポーズをとっていることからも、彼女が何かを生み出す立場であることがうかがえるでしょう。
人物と共に描かれているもの
女帝は赤と黒のクッションに背をもたれて座り、足元には金星のマークが描かれた盾が立てかけられています。
金星は愛情や調和、美しさ、女性性などを象徴する天体です。
手前のクッションの赤は情熱や愛情、活力、本能などを意味します。
さらに、奥の黒いクッションをよく見ると、金星らしきマークが描かれていることがわかります。
情熱や本能をあらわす赤いクッションと、愛情や女性性を示す黒いクッションが重なり合っていることから、これらのモチーフは繁殖によりもたらされる豊穣や、理性を超越した原始的な欲求などを暗示しているとも解釈できます。
カードの意味
ここでは占いの解釈に正逆位置を取り入れない場合も考慮し、あえてカードの意味をポジティブ、ネガティブと表記しています。
正逆位置を取り入れる場合はポジティブな意味を正位置、ネガティブな意味を逆位置と考えてください。
Positive(正)
・豊かな愛情や実りを受け取る
・人を惹きつける魅力や美しさ
・物質的な豊かさや心のゆとり
・自然体で愛し愛される関係
Negative(逆)
・持て余すほど過剰な実りや分不相応なぜいたく
・人々の愛情や温情に対する感謝とありがたみを忘れる
・怠惰な生活、自分磨きや愛されるための努力を怠る
・豊かな生活や愛情に対する憧憬と渇望
解釈の一例
恋愛
+ 母性、包容力、待ち望まれた妊娠、愛情や慈しみの心を育む、愛し愛される関係
− 共依存、浮気、不倫、愛人関係、お互いを甘やかすだけの未来も成長も望めない関係
仕事
+ 十分な報酬、調和のとれた快適な職場、ゆとりのある働き方、チームワーク、大きな利益を生む
− 仕事の内容と給与や待遇がともなわない、サボり癖、公私混同、利益や成果のあがらない仕事
状況・性質
+ 才色兼備、エレガントな雰囲気、深い思いやりや愛情、生産性のある関係、成熟した内面、自然体、リラックス
− 利己主義、過保護、自制心のなさ、見通しの甘さ、だらしなさを許し合う関係、生活習慣病、婦人病
解釈に迷ったときは
ここに記したカードの解釈はあくまでも一例です。
同じカードでも、相談者の状況や占者により解釈は異なります。
自分の解釈に自信がないときや、他の人の解釈も聞いてみたいというときはプロに相談するのもひとつの方法です。
占い師紹介
島谷実郷(しまや みさと)
占星術師・タロット占い師。 探偵事務所調査員や納棺師、ライターなどの職業を経て2017年『占い処 十一時屋』を設立。 2020年5月島根県へ移住。 現在は松江市や出雲市を中心に対面鑑定を行うかたわら、チャットやSNSを利用したオンライン鑑定も受付中。