調和と秩序を守る指導者
対応する星座:おうし座
絵柄の解釈
ここではライダー版(ウェイト版、ウェイト・スミス版)の絵柄を元に描かれている人物やモチーフを解説します。
背景・ロケーション
女帝の法王(司祭)の背後には灰色の二本の柱が立っています。
宗教、特にキリスト教において、灰色は特別な意味を持つ色です。
懺悔や謙虚な心を象徴する灰色、特別な礼拝や断食の期間に身につける衣装などに多用されます。
黒にも白にも染まりきらない灰色は、彼岸と此岸、聖と邪など、対極をなすものの中間に位置する空間や存在をあらわす色とも考えられるでしょう。
このことから法王の後ろに立つ柱は現世と常世の境界であり、俗人が簡単に足を踏み入れることのできない聖域への入口であると解釈できます。
衣装や小物
法王は頭上に三つ重なった冠を頂き、左手には教皇十字の杖を携えています。
三重になった冠は教皇冠と呼ばれ、教会の中においても特に権威ある者の象徴とされています。
3はキリスト教において特別な数字であり、父(神)と子(キリスト)と聖霊の三位一体をあらわします。
教皇十字もまたローマ法王のシンボルです。
このことから法王が宗教者として偉大な人物であり、神聖かつ厳粛な場に立っていることがわかります。
人物と共に描かれているもの
法王は右手を掲げ、手前に並ぶ二人の司祭に祝福のサインを送っています。
司祭はそれぞれ赤いバラと白いユリの模様が入った衣装を着ていますが、赤い薔薇は情熱や愛情、白いユリは純潔や気高い精神を象徴します。
この三人の関係性についてはさまざまな説が唱えられていますが、祝福を授ける者と受ける者という明確なヒエラルキーをあらわしているという説もあれば、肉体・感情・精神という人間を構成する三位一体を暗示しているという説もあります。
なお、大アルカナ2番「女教皇」もまた法王と同じ宗教者ではありますが、彼女が持つ巻物(おそらく教義が記されたもの)が部分的に隠されているのに対し、教皇の示す祝福のサインは誰の目から見てもそれとわかるものです。
このことから法王は、女教皇のように神秘的な存在ではなく、現世に生きる人間であると読み取れます。
さらに、足元に描かれた交差する鍵は、ローマ法王を象徴するシンボルです。
これは神の国へ至る扉や、道なる世界への入口を開く鍵と思われます。
このことから法王は厳粛な場に立つ敬虔な聖職者でありながら、苦しみの中にいる人々へ分け隔てなく祝福を授け、天国への鍵を授けようとする誠実な人物であると解釈できます。
カードの意味
ここでは占いの解釈に正逆位置を取り入れない場合も考慮し、あえてカードの意味をポジティブ、ネガティブと表記しています。
正逆位置を取り入れる場合はポジティブな意味を正位置、ネガティブな意味を逆位置と考えてください。
Positive(正)
・社会のルールを守り、平和と調和を維持する
・互いを尊重し、許し合い、信頼し合う、固い絆で結ばれた関係
・精神的な成長
・手本となる人物
Negative(逆)
・ルールを逆手に取り、悪用する
・偽善や裏切り
・インモラルな快楽に溺れる
・悪徳に手を染めた代償を支払う、罰を受ける
解釈の一例
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解釈に迷ったときは
ここに記したカードの解釈はあくまでも一例です。
同じカードでも、相談者の状況や占者により解釈は異なります。
自分の解釈に自信がないときや、他の人の解釈も聞いてみたいというときはプロに相談するのもひとつの方法です。
占い師紹介
島谷実郷(しまや みさと)
占星術師・タロット占い師。 探偵事務所調査員や納棺師、ライターなどの職業を経て2017年『占い処 十一時屋』を設立。 2020年5月島根県へ移住。 現在は松江市や出雲市を中心に対面鑑定を行うかたわら、チャットやSNSを利用したオンライン鑑定も受付中。