他者との交わりにより生じる化学反応
対応する星座:いて座
絵柄の解釈
ここではライダー版(ウェイト版、ウェイト・スミス版)の絵柄を元に描かれている人物やモチーフを解説します。
背景・ロケーション
川か湖のほとりと思われる場所に天使がたたずんでいます。
右足は水の中に、左足は地面に置いていることから、天使はふたつの異なる要素、あるいは異なる世界を結びつける仲介役を果たしていると考えられます。
さらに、天使の背後には山へ続く道が伸び、山頂は光り輝いています。
この光はよく見ると王冠をかたどっているように見えますが、実は王冠はタロットカードの絵柄や枚数、解釈等の根源である秘術『カバラ』と深い関係があるのです。
カバラにおける王冠は簡単に言えば物事の始まりや生命の誕生を意味します。
つまり、この道を真っ直ぐ行けば新たな世界、未知の領域に辿り着けるとも解釈できるでしょう。
衣装や小物
天使は両手にふたつのカップを持っています。
左手のカップからの右手のカップへ水を移し替えているようにも見えますが、これは水とお酒を混ぜ合わせている場面ではないかと考えられています。
中世から近世にかけてのヨーロッパでは、水は貴重品でした。そのため、基本的に飲用水はそのまま飲まず、ワイン等を混ぜて薄めながら少しずつ消費していたのです。
また、『節制』には節度を保つという意味のほか、節酒の意味も含まれます。
このことから、天使が持つカップの中身は水で薄めたお酒であるという解釈が一般的になりました。
同時に、天使が異なるふたつの要素を仲介する、融合させる役割を果たしているという解釈の根拠にもなり得るでしょう。
この天使は白いワンピースのような衣装に身を包んでいますが、胸元に白い四角形の中にひとまわり小さい三角形を組み合わせたような不思議なマークをつけています。
四角形は四大元素(地・水・火・風)、三角形は錬金術における三大要素(硫黄・水銀・塩)をそれぞれ象徴していると言われています。
つまり、このカードに描かれているのは万物を操ることのできる、人智を超えた存在であると解釈できるのです。
人物と共に描かれているもの
天使の足元には黄色いあやめと見られる花が咲いています。
あやめは英語でIris(アイリス)と書きます。
翼の生えた人物といえば天使を連想してしまいがちですが、このことからカードに描かれているのはエジプト神話に登場する虹の神イリスなのではないか?という説もあるようです。
カードの意味
ここでは占いの解釈に正逆位置を取り入れない場合も考慮し、あえてカードの意味をポジティブ、ネガティブと表記しています。
正逆位置を取り入れる場合はポジティブな意味を正位置、ネガティブな意味を逆位置と考えてください。
Positive(正)
・他者から影響を受ける
・自分とは異なる意見や価値観も受け入れる
・議論を通して自分の意見や論理を発信する
・自己矛盾に気付き、臨機応変に心のバランスをとる
Negative(逆)
・他者を拒絶する
・異なる意見や考え方を受け入れられない
・意見の喰い違いや口論を招いてでも自分を貫く
・柔軟性に欠ける
解釈の一例
恋愛
+ 順調な恋、心身ともに相性のよい相手、関心を惹きつけられる相手、知性を感じる相手、相互理解
− 進展が見られない恋愛、相手を振り回してしまう恋愛、自分ばかり優先して相手を顧みない、一方通行の想い
仕事
+ 仕事仲間との交流、積極的に意見を交わす、仕事へ生かすための知識を身につける、新鮮ながら居心地のよい環境
− 協調性に欠ける、臨機応変な対応ができない、孤立する、ワンマン、仕事を分担したり指揮したりする能力がない
状況・性質
+ 環境や価値観が異なる人々との交流、誠実な友人、交友関係の広がり、やりくり上手、スムーズな移動、
− 心を閉ざす、足並みを揃えられない、相手の話を聞かない、すれ違い、無駄が多い、遅延や渋滞、体に合わない薬や食事
解釈に迷ったときは
ここに記したカードの解釈はあくまでも一例です。
同じカードでも、相談者の状況や占者により解釈は異なります。
自分の解釈に自信がないときや、他の人の解釈も聞いてみたいというときはプロに相談するのもひとつの方法です。
占い師紹介
島谷実郷(しまや みさと)
占星術師・タロット占い師。 探偵事務所調査員や納棺師、ライターなどの職業を経て2017年『占い処 十一時屋』を設立。 2020年5月島根県へ移住。 現在は松江市や出雲市を中心に対面鑑定を行うかたわら、チャットやSNSを利用したオンライン鑑定も受付中。