情熱と理性を巧みに操る御者
対応する星座:かに座
絵柄の解釈
ここではライダー版(ウェイト版、ウェイト・スミス版)の絵柄を元に描かれている人物やモチーフを解説します。
背景・ロケーション
戦車の後ろにはお城のような建物がそびえ立っています。
おそらく戦車はこのお城から飛び出してきたのでしょう。
戦車とお城の間には川が流れ、引き返すことができない状態です。
このロケーションから、戦車および戦車に乗った青年が背水の陣よろしく後には退けない覚悟で旅立ったと解釈できます。
衣装や小物
戦車に乗った青年は星の飾りがついた冠を被り、鎧のような装束を身にまとっています。
冠についた星は八芒星といい、その名の通り八つの光芒があります。
これは大アルカナ3番『女帝』や17番『星』にも描かれているモチーフです。
タロットカードにおける星は希望や才能の象徴であり、この青年も期待や志を胸に抱いて旅立ったのだとわかります。
なお、『女帝』も『星』も女性を描いたカードです。
したがって『戦車』にも女性性を示す要素があるのではないかとも言われています。
さらに、青年の両肩には月らしきモチーフがあしらわれています。
月は女性性の象徴であると同時に、この先の未来が見通せない不安を意味します。
青年の腰に斜めに巻かれたベルトにも、月の惑星記号やかに座の星座記号、ヘブライ語と思しき文字などが書かれているのが見て取れます。
ベルトが真っ直ぐではなく少し曲がっているのは、青年が不安を抱いていることの暗喩ではないかと解釈している魔術師や研究者も多いようです。
このことから青年は期待や希望を胸に新たな世界へ臨みながらも、同時に未知の領域に対する不安や懸念も抱いている状態にあると考えられます。
なお、青年が手にしている棒については、剣であるという説とワンドであるという説がありますが、現時点でははっきりとした結論は出ていません。
棒の存在を考慮することで、かえって解釈に迷うのであれば、無視しても問題はないでしょう。
人物と共に描かれているもの
青年の乗る戦車を引いているのは二頭のスフィンクスです。
白と黒のスフィンクスは、大アルカナ2番『女教皇(女司祭)』に描かれたボアズとヤキンの二本の柱を連想させます。
スフィンクスを二本の柱に当てはめるなら、黒いスフィンクスは女性性や厳格さ、白いスフィンクスは男性性や慈悲深さをそれぞれ意味していると考えられます。
一方で、二頭のスフィンクスは光と影をあらわしているという説もあるようです。
いずれにせよ、二つの異なる属性を持つスフィンクスを手綱もつけずに操ることのできる青年は、卓越した集中力や冷静な判断力を備えていると同時に精神的なバランスが取れた状態であると解釈できます。
また、戦車には翼と盾のような飾りがあしらわれています。
盾の中に描かれた赤いモチーフはコマであるという説と、リンガとヨニであるという説があります。
リンガとヨニはヒンドゥー教に伝わるシンボルで、リンガが男根、ヨニが女陰をそれぞれ意味します。これもスフィンクスと同様、二つの異なる属性が組み合わせられたものです。
どちらと解釈するにせよ、バランスや和合を意味しているという説が一般的です。
なお、戦車のみに注目すると走っている状態なのか、あるいは止まっている状態なのかが一見してわかりづらい状態です。
しかし、スフィンクスが猫のように前足を畳んで座っていることから、カードの中に描かれた戦車が停止していることがわかります。
カードの意味
ここでは占いの解釈に正逆位置を取り入れない場合も考慮し、あえてカードの意味をポジティブ、ネガティブと表記しています。
正逆位置を取り入れる場合はポジティブな意味を正位置、ネガティブな意味を逆位置と考えてください。
Positive(正)
・未知の世界に飛び込む
・新たな物事をスタートする勢いと覚悟
・勝利をもぎ取れるだけのエネルギーと闘争心
・ハードルを乗り越え次のステージに進む
Negative(逆)
・力やエネルギーをコントロールできない
・全く見当違いの方向へ暴走する
・準備が行き届かずトラブルや障害を突破できない
・立ち止まって自分や状況を見つめ直す
解釈の一例
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解釈に迷ったときは
ここに記したカードの解釈はあくまでも一例です。
同じカードでも、相談者の状況や占者により解釈は異なります。
自分の解釈に自信がないときや、他の人の解釈も聞いてみたいというときはプロに相談するのもひとつの方法です。
占い師紹介
島谷実郷(しまや みさと)
占星術師・タロット占い師。 探偵事務所調査員や納棺師、ライターなどの職業を経て2017年『占い処 十一時屋』を設立。 2020年5月島根県へ移住。 現在は松江市や出雲市を中心に対面鑑定を行うかたわら、チャットやSNSを利用したオンライン鑑定も受付中。